立つための筋肉「抗重力筋」

お読みいただき、ありがとうございます。本八幡 風の整体院 岩田です。ほかの生物にもある推進筋の一部が進化してできたのが抗重力筋です。この抗重力筋は文字通り重力に抗い、地面から身体を垂直方向に持ち上げる姿勢を可能にします。さらに、関節をひとつずつ分離して動かせることから細かな動きも可能にした筋肉です。人間は抗重力筋が進化しており、特におしりの筋肉や身体の前側にある腸腰筋の一部、「腸骨筋」が格段に進化したことで、二本足で立って歩くことが可能となりました。そのぶん、推進筋の力は減少し、四足動物のようにスピーディーに動くことはできなくなりました。人間は、二足立位と二足歩行を確立させたことで両手が自由になり、さまざまな作業に両手が活用されたことで脳の発達が促進され、現在のような文化のある生活を営むことができるのです。これは推進筋のような推進力しか生み出せない筋肉の一部が、身体を垂直方向に持ち上げ維持する抗重力筋へと進化し発達したことがそもそもの始まりとされています。抗重力筋の特徴は次の通りです。

●関節を固定する力がある…この筋肉は、長さは短いのですが、付着面が広いことから特定の関節を一定のポジションに固定する力があります。そうすると関節が安定するため、結果的に関節を守ることにつながるのです。

●身体を垂直に支えてくれる…抗重力筋は、身体を垂直方向に固定、安定させることに優れています。特に人間の場合はほかのどんな生物よりも抗重力筋が発達しているため「二足立位」「二足歩行」を基本的な能力として実現させることができたのです。

●関節をひとつずつコントロールできる…推進筋と違い、細かく関節をコントロールできるため、手の指や足の指の複雑な動きを生み出すことができます。特に手の指に関しては巧緻性という性質により、手のひらの中にあるたくさんの関節をひとつずつ起用にコントロールすることで、細かい手先の動きを可能にし、環境に応じて指先を自由に使い、道具を扱うことを可能としました。

●バランスを自動的にコントロールしている…抗重力筋は推進筋と違い、ある姿勢を長時間保持し、身体のバランスをコントロールすることに優れています。たとえば片脚立ちの姿勢を長時間安定して保つためには、おしりの筋肉をはじめとする下半身の抗重力筋の力が欠かせません。なぜ抗重力筋は不安定な姿勢でもバランスをコントロールできるのか。それは抗重力筋と密接につながっている「機械受容器」という感覚センサーのおかげなのです。この機械受容器は抗重力筋や関節内にあり、さまざまな情報(筋肉の張力や関節内の圧力、位置情報)を脳や脊髄などの中枢部に素早く伝達します。中枢部はこの情報をもとに、運動神経を介して抗重力筋の働きを自動的にコントロールしているのです。このように抗重力筋は、二足歩行をする人間にとって重要な役割を担っています。