見ているだけでかゆくなる

お読みいただき、ありがとうございます。本八幡 風の整体院 岩田です。かゆみには、もう一つ不思議な特徴があります。それは「かゆみは伝染する」ことです。周囲の人がかいているところを見ていると、自分もなんとなくかゆくなってきませんか?あるいは、かゆそうな皮膚炎の患者さんを見たり、たくさん蚊に刺されている人を見ていると、自分も同じようにかゆくなってきて、かきたくなりませんか?この現象は世界中で報告されており、特にアトピー性皮膚炎の患者さんでは、その傾向が強いことが知られています。かいている人や、かゆそうな光景を見ると、なぜ自分もかゆくなってくるのかを、機能的MRIを用いて検査した実験があります。これもシンプルな実験です。蚊にたくさん刺されている腕の写真など、見るだけでかゆくなりそうな写真をたくさん用意します。これが「かゆみ誘発群」です。それに対して、全く正常な腕の写真など、全くかゆみとは関係なさそうな写真も用意しました。これを「対照群」と呼びます。被験者さんは、次々にランダムな順番で提示される写真を、ただ見ているだけです。実験では、「かゆみ誘発群」の写真を見ている時と、「対照群」の写真を見ている時の脳活動の相違を調べてみました。すると、「かゆみ誘発群」の写真を見ている時には、実際にかゆみ刺激を与えられた時と同じような場所が活動することがわかりました。実際にはかゆくないはずなのに、他人のかゆみが伝染して、脳はかゆいと感じてしまったわけです。かゆみほどではありませんが、痛みにも似たような傾向があります。痛そうな写真を見ただけで、痛い時に活動する場所が活動します。慢性腰痛に苦しんでいる人に、いかにも腰に負荷がかかりそうな写真を見せると、痛い時に活動する場所が活動します。腰痛がない人に同じ写真を見せても、そのようなことは起こりません。こういう現象は、かゆみと痛みだけに起こるもので、かゆみと痛みの特異性がよくわかります。