お読みいただき、ありがとうございます。本八幡 風の整体院 岩田です。かゆみ感覚をシンプルに定義することはとても困難です。国際学会では、かゆみは「かきたいという衝動を引き起こす不快な感覚」と定義されています。わかったような、わからないような不思議な定義ですが、「かゆみ」と「かきたいという気持ち」が非常に強い結びつきを持っていることがわかります。みなさんも、かゆいところをかく時に「気持ちいい」と感じることがあると思います。しかし、よく考えると、それはとても不思議なことです。痛いところを触っても、気持ちよくはなりません。他の感覚も同様で、かゆみだけが特別なのです。かゆいところをかいたときに、私たちの脳の中で、何か特別なことが起こっているにちがいありません。「かゆいところをかくと快感が生じる。その時、脳内で何が起こっているのか」それを実験した研究があります。人間の脳活動を調べる時に、現在最も広く使われている最先端の方法は、機能的MRIという方法です。脳の中でも、活動が高まっている部位では血流が増えます。機能的MRIを用いることにより、血流が増えている部位がわかります。そこが、活動が高まっている場所になるのです。実験は非常にシンプルなものです。電気によるかゆみ刺激を、被験者さんの手首に与えます。そして、2本の指に見立てて作った細長い銅製の道具で皮膚をかきます。一方のグループは。かゆみ刺激を与えられている手首をかきます。被験者はとても気持ちがいいので「快楽条件」と命名されました。もう一方のグループは少し離れた前腕部をかきます。少しも気持ちよくありません。両者の違いは、与えている刺激自体は同じなので「気持ちがいいかどうか」です。機能的MRIで脳活動を調べてみると明らかに「快楽条件」の時だけに大きな活動が見られる場所がありました。それは、中脳や線条体にある「報酬系」とか「快楽中枢」と呼ばれる場所でした。この場所は、ギャンブルで儲けたとか、宝くじに当たったというような、物質的な快楽を覚える時に活動します。また、良いことをして他人に褒められるような心理的な快楽を覚える時にも活動します。つまり、「かゆいところをかく」ことは、人間にとって大きな快楽なのです。この実験では、報酬系のほかに、運動前野という場所と補足運動野という場所も活動していることがわかりました。これらは、運動準備、つまり体を動かそうとする前に活動する場所です。「かこうとする」運動の準備です。私たちは、やはり自分でかきたいのです。
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