「1日1個のリンゴで医者いらず」は本当か

お読みいただき、ありがとうございます。風の整体院 岩田です。イギリスのウェールズ地方などに古くから伝わることわざで、「1日1個のリンゴで医者いらず」というものがあります。このことわざは、果たして真実なのでしょうか。それをオックスフォード大学の研究者がまじめに検証したユニークな研究報告が、世界的にも権威ある英国の医学雑誌「ブリティッシュ・メディカル・ジャーナル」に掲載されました。調査は、イギリスの50歳以上の人々を対象に行われました。研究チームは、リンゴにコレステロールを下げる効能があることに着目しました。コレステロールを下げる薬であるスタチン系薬剤を飲んでいない人が新たに飲み始めた場合と、1日1個のリンゴを食べた場合とを仮定し、心臓発作など血管の病気による死者数がどれほど減るかをシミュレーションしました。ここでリンゴの方が効果が高かったら、まさに「医者いらず」なのですが、実際の調査結果では、スタチン系薬剤を飲んだ場合の年間の死亡数の減少は9400例であったのに対し、リンゴでは8500例の減少にとどまりました。しかし、薬には必ず副作用のリスクがあることを考えれば、リンゴの効果は極めて優秀と言えるのではないでしょうか。研究者は「現在、スタチン系薬剤を処方されている人はリンゴに置き換えるべきではない」と慎重な姿勢を示した上で、「リンゴは現代的な薬と同等の効果を持ち、副作用も少なさそうだ」と結論付け、ことわざを肯定しています。また、アメリカでも同じような分析が行われました。ミシガン大学看護学部の研究チームは、2007年から2008年と、2009年から2010年にかけて行われた「国民健康栄養調査」をもとに、アメリカの成人約8300人分のデータを分析しました。そのうち、リンゴを1日1個食べている人は全体の約9%存在していました。そこで、リンゴを毎日食べているのはどのような人たちなのか調べたところ、それまでに受けた教育のレベルが比較的高く、さらに喫煙をする人が少ないという傾向が認められたといいます。そして、リンゴを食べている人と食べていない人を健康面で比べたところ、食べている人のほうが薬の処方を受けているのが少ない傾向が認められました。なお、2つのグループ間の経済状態や健康状態などの差を調査して検討した結果では、医者を受診すること自体に関しては統計学的な差異は認められませんでした。研究チームは「1日1個のリンゴで医者いらずというよりも、薬いらずである」と語っています。