お読みいただき、ありがとうございます。本八幡 風の整体院 岩田です。脊柱は人体の大黒柱であり、姿勢と体幹を支えています。建物の構造を支える大黒柱はどこから見てもまっすぐですが、脊柱は真正面から見るとストレートなのに、真横から見ると緩やかにS字状のカーブを描いています。これを生理的彎曲、またはS字カーブと呼びます。S字カーブは、首(頸椎)、胸(胸椎)、腰(腰椎)という3か所で見受けられます(このほか、仙尾骨にもカーブがあります)。具体的には、頸椎で前方に30~35度前彎、胸椎で後方に34~37度後彎、腰椎で前方に43~45度前彎しているのです。こうしたS字カーブは、ヒトが直立二足歩行をする進化のプロセスで得たものだと考えられています。もともとヒトの骨格は、ほかの動物と同じように四つ足で身体を支えながら移動するためにデザインされたものです。それをフルモデルチェンジすることなく、マイナーチェンジして使っているのです。そのマイナーチェンジの中でもことに大事なのが、ほかの動物には見受けられない脊柱のS字カーブです。通常、四つ足の動物の脊柱は地面に対してアーチを描くように後彎しているだけなのです。頭部の重さは成人で体重のおよそ10%、70㎏なら7㎏前後にもなります。これほど重たいものを脊柱に乗せるとバランスが悪くなり、着地などの衝撃がダイレクトに頭部に伝わると脳への悪影響も心配されます。そこで、前後へ交互に彎曲するS字カーブがサスペンションのように働いて重みや衝撃を適度に散らして、より少ない労力で姿勢を安定的に保ち、頭部に加わるダメージを軽くして脳を守っているのです。まっすぐな脊柱と比べると、S字カーブを描く脊柱は垂直方向の強度が10倍になります。ヒトのS字カーブは、発生から成長するにつれて徐々に作られます。お母さんのお腹にいる胎児の頃は脊柱全体が緩やかに後彎しています。この脊柱の後彎を一次彎曲と呼びます。誕生後、首が据わる頃になると、頸椎の前彎が生じるようになります。さらに、立って歩けるようになると、腰椎の前彎が生まれます。こうした脊柱の前彎を二次彎曲と呼びます。一次彎曲と二次彎曲の組み合わせにより、直立二足歩行を可能にするS字カーブが完成するのです。
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