脳は「トレーニング」で変化する

お読みいただき、ありがとうございます。風の整体院 岩田です。脳は、一般的に12歳前後の思春期の頃にほぼ完成するといわれています。そして完成した後の脳は、従来スタティック、つまり静的で形態が変化しないものだと思われてきました。ところが2004年にその定説をくつがえす衝撃的な発表が科学雑誌「Nature(ネイチャー)」に掲載されたのです。その衝撃的な内容とは、大学生を対象に大道芸などで見られる「複数のものを空中に投げ続けるジャグリング」をやってもらったところ、頭頂葉や側頭葉の脳の体積が増えたというものでした。このことによって、脳はスタティックなものではなくダイナミックなもの、つまり動的なもので、脳はトレーニングによって変化するものであることがわかったのです。その後、ピアノのトレーニングをすると、やればやるだけ右の脳と左の脳をつなぐ「脳梁」という領域が厚くなることや、バスケットボールの選手やバレエダンサーなどは運動に関係する脳の領域が大きくなることなど、「脳は変化する」ということが次々と報告されてきました。脳の完成後、新たに神経細胞を生み出すことができるのは海馬だけですが、海馬以外の領域に至っても、脳はトレーニングによって神経細胞と神経細胞をつなぐネットワークを発達させ、体積を増やし、その部分の働きを増やす能力を持っていることがわかったのです。つまり脳には、外部からの刺激や作用によって形が変化する「可塑性」のあることがわかったのです。これは海馬の神経新生の事実に加え、脳科学の歴史を大きく塗り替える発見ということができるでしょう。そして、これは脳の限りない可能性をも意味します。これらの可塑性は若年層に多く見られるものですが、先にあげたジャグリングのトレーニングでは、平均60歳の健常な高齢者を対象にした検証でも同じような結果が得られたという報告があります。中年期、または高齢であっても、脳は変化する可能性が充分にあるということです。